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  • 執筆者の写真サエグササエル

ジャンプ+編集長が語る新人漫画家の育成方法と鳥山明先生の神対応

2021年10月3日放送のTOKYOFM『空想メディア』に、『少年ジャンプ+(プラス)』編集長の細野修平氏(44)がゲスト出演。編集長の仕事や新人漫画家の育成方法、さらにレジェンド鳥山明氏について語った。


『少年ジャンプ+』編集長の仕事は



編集長と聞くとかなり権力のあるイメージだが、『少年ジャンプ+』編集長の仕事はあまり明確に決まっていないそうで、たとえば連載作品の決定権に関して、『週刊少年ジャンプ』の場合は、編集長と各班の班長以上の会議で決まるが、『少年ジャンプ+』に掲載される作品は、編集部の全員で決めるという。

そのため、同じ編集長でも権力の差があると感じるというが、合議制である事は、1人の編集者だけで担当する事から生まれる運次第を減らす意味合いもある。誰かがプッシュすれば載せられるのが『少年ジャンプ+』だという。


一部、編集長のカラーが出る雑誌もあるが、『ジャンプ+』ではそれは無いようにしていて、「みんなが載せたいと思うものを載せよう!」「誰か一人でも“良い”って言ったら、“じゃあ載せるか”」という空気を大切にしている。

ネット上なので、ページ制限が無いため作品をジャンジャン載せているが、もちろん原稿料は発生している。


『ジャンプ+』には少年マンガ、少女マンガ、青年マンガ問わず送られてくる。送られてくる作品は少年マンガと少女マンガの比が6:4で、少年向けと青年向けの比率は5:5くらい。そのため、細野氏は少年マンガに限らず、なんでも読むようにしている。


編集長としては多くの投稿作品の中から編集部員たちが挙げてきた物をチェックするだけでいいのだが、連載作品はちゃんと目を通すため、月に4000~5000ページのチェックを行う。月の内、3日間×2回と決め、3日で2000~2500ページもチェックする。

さすがに疲れてくるのだが、細野氏は気晴らしに別のマンガを読むという。そのため編集部員達からは「あの人、またマンガ読んでるよ」と思われている。

だが現在は細野氏でも目を通せないほどの多くの作品が世に流れている。


細野氏が立ち上げたマンガは



細野氏は元々、「マンガが好き」ぐらいの感覚で就職活動し、集英社に入社。

入社の決め手として、面接では「どんなマンガ読んでる?」と訊かれた時に、「少女マンガも読んでます」と答えたのが、会社的には刺さったのではないかと振り返った。

同期もいるが、編集部全体として、「めちゃめちゃマンガ好き」はあまり多くないそうで、一方で文芸部好きもいて、マンガ好きじゃなかったり、あまり読んだことのない人が関わることで、新鮮な目を持って斬新な作品を生み、成功するパターンも存在すると解説した。


また最近社内では、持ち込みに来て担当も付いたが、漫画家の道を諦めて集英社に就職した人や、脱サラして漫画家や漫画原作者になる人、なろうとしている人も増えてきていると語った。


『週刊少年ジャンプ』に配属され、その時出会ったスゴい先輩を訊かれた細野氏は浅田貴典氏を挙げた。

浅田氏は『ONE PIECE』『BLEACH』を立ち上げた人物で、どんな話をするのか訊かれると、「すっごいくだらない事ばっかり話します」と細野氏は語った。

尾田栄一郎先生などレジェンドの話は訊けば答えてくれるが、最近はマンガであれが好きこれが好きと、1人のマンガヲタクと喋っているような感じだと語った。


細野氏は7年前まで『ジャンプSQ.(スクエア)』に所属。人気漫画『終わりのセラフ』を「絶対面白くなる!」と、やや強引に押し通し、連載を実現させた。

この決断について細野氏は、漫画家(書き手、作り手)に作品への大きな熱があるかどうかで、ベテランになると綺麗な作品にはなるが、パワーは感じられなくなってくることが多く、ちゃんと熱を感じられるかどうかだという。


人気漫画家が出来るまで



現在の持ち込み事情について、持ち込みは電話を最初に取った人間が担当する、運次第というのは有名だが、最近はオンライン申請も増えている。作者から編集者の指名は基本的には無い。


ただ、漫画賞への応募者から選ぶ場合は、どの作品(作者)を取るかは、若手から選んで良いようになっている。これは編集部が一番若手にチャンスを与えるのと、感性も若いというところに期待している。

このシステムに先輩としてはヤキモキするそうで、目を付けていた良いと思った作品はやっぱりなかなか残らないそう。しかし最近のヒットはベテランが取って生まれたという。


現在、集英社が行っている『ジャンプルーキー!』という投稿サイトには、月平均3000作が投稿されている。その中で若手が作品を選んで、可能性を感じるものが月5~10本上がってくるという。


新人漫画家の育成方法



そしてそこから編集者は漫画家の育成が始まるが、新人漫画家の成長力の見極め方について細野氏は、人によるが、編集者は1作目と2作目の差分を見るそうで、2作目を描かせてどれくらい成長したかで、伸び方がわかる、伸びが感じられるという。

また、その差はストーリーに現れるようで、「画は描いたら絶対伸びるんで」、ストーリー構成力がどれくらい上がったかを気にしているという。

ただ、もちろん画は大事。作家の気質にもよるが、画の良し悪しの指摘は、最初にいきなり全ての直す個所を言ってしまうと、作家の心が折れてしまうため、ストーリーなどの方に口を出すようにしているという。


また、連載にいたるまでには、いきなり長編ではなく、読み切り、短篇をまずしっかり作るところに重きを置いているそうで、人気大長編マンガ『ONE PIECE』も2~3本の原型となった読み切りがあるが、「尾田先生はスゴすぎるんで、あんまり良い例じゃないかな(笑)」と説明した。


レジェンド漫画家・鳥山明は



週刊少年ジャンプ編集部は幾度かテレビで潜入されて放送されているが、生原稿がゴロゴロ転がっている様子も映し出される。

編集部としては、原稿は基本的に作家に戻すそうだが、先生によっては「(ジャマだから)持っておいてくんない?」と編集部の鍵付きのロッカーに預ける方もいる。

『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の秋本治先生はきちんと整理されており、書類入れの引き出しの1つに1話分の原稿を入れているようで、あの回の原稿を出そうと思えばすぐに出てくるようになっている。


集英社と言えば、『DRAGON BALL』の作者であるレジェンド・鳥山明先生だが、現在『Vジャンプ』で『DRAGONBALL超(スーパー)』が連載されているため、東京の集英社に来ることもあり、細野氏もたまに見かけるという。

細野氏は直接の接点は無いため、見かける程度だが、実際に会った人間からは、「気さくな人」「普通の人」と言われている。


実は細野氏も「異世界転生もの」が流行り出した2016年に『転生したらヤムチャだった件』を企画し制作を担当。

ダメ元で鳥山先生の担当者を介して、企画実現のために企画案を送り、そして鳥山先生からメールをもらったが、「こんなのダメだよ」と投げ返されることもなく、むしろ「こういう形にした方が、読者がもっと入りやすくなるよ」とすごく丁寧なメールを書いていただき、「編集者の僕が考えなければいけないことを」と、恐縮したという。


漫画家と会う事は



このコロナ禍で作家に会いに行くのは控えるようお達しも出たが、各編集員からは、「作家さんは会いに来てほしい」「直接話したい」という意見が多く、対面で話すことによって創作意欲もかき立てられることや、単純に人恋しさもあって会う事の必要性もあるという。

実は編集者が作家と打ち合わせるために会いに行く事はそんなに頻繁ではないのだが、食事に行く事は多いそう。

会うと、作品の事も話せば、作品とは無関係なしょうもない事も話すギャップがあって楽しいという。


ただ、作品への口出しは作者により人それぞれで、これはキャリアではなく、漫画家それぞれのスタイルで、アイデアをあるだけくれ、という作者もいる。

アイデアを言っても、その場、その作品では採用されないが、後にもしかしたら影響を与えたかもと感じる時はあるという。


細野氏は「この仕事で一番良いのは、作家さんって言ってしまえば天才なんですよね。天才たちと仕事ができる」事にあると語った。



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